話題作を送り続けるアニメーター、『新海誠』の作品を紹介

若者たちから絶大な支持を集める稀代のクリエイターである『新海誠』さん。彼が描いた監督作品を見たという人も多いでしょう、それは何処か心を打ち、ただ漠然と見るだけでは理解できない、そんな心象心理を見事に描いている作品が多い。このサイトではこれまで公開された彼の作品を紹介・考察していきます。

考えさせられるラスト

何故サユリは突然姿を消してしまったのか

今作を見ているとわかると思いますが、日本は分断されても至って平和な日常を過ごしている。ヒロキとタクヤの二人を見てもらえばわかると思いますが、何か不自由な生活を強いられているわけではなく、至って平凡に過ごしていた。中でもタクヤはこの頃から物理学において天才的な頭脳を持っていたことから将来を嘱望されているものの、ヒロキという気兼ねなく接する事が出来る友人に恵まれていた。一方のヒロキはどこにでもいる平凡な少年であり、弓道部に所属している以外は何も取り柄はなかった。

そんな2人が共通の夢として抱いていた、ユニオンの塔と呼ばれるものへいくこと、その夢を一緒に見るようになるサユリは2人が想いを寄せる相手でもあった。恋敵でありながらも、いつか3人で交わした約束を胸にその日が来るのを夢見ていたが、彼らの夢が潰えるようにサユリは何かを言うわけでもなく消息をくらましてしまいます。

どうして何も言わないままいなくなってしまったのか、ヒロキはサユリに何一つ言えなかったことを後悔して塔が見えなくなるように青森から東京へ上陸し、タクヤもまた塔へいくという約束を胸に閉まって地元の高校へ進学、つてで政府機関で塔について研究していくことになった。

その3年後、サユリがどうしていなくなってしまったのか、虚無感のまま東京で一人暮らしをしていたヒロキの元へ届けられた手紙で彼女の容体を知る。そして助けを求めたタクヤが告げた真実、それは同時にサユリがいなくなった理由にも繋がっていた。奇しくも彼女が昏睡を続けている原因に、かつて彼らが目指したユニオンの塔も絡んでいたのです。

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平行世界の可能性を引きずり出す装置として

物語を考察するためにはネタバレが必須なので述べていくと、そもそもユニオンの塔とは何かという話だ。ユニオンが蝦夷に建築したその塔、それはあらゆる平行世界を見通せる観測機能を持ち、ありえたかもしれない世界を、現実の世界に書き換えていけるという恐るべき装置だったのです。これを使ってユニオンは、自分たちの都合がいい、自分たちが時の支配者として君臨し、世界の覇権を牛耳るためのものだった。そしてそれを開発したのは他でもない、サユリの祖父が関わっていたという。

その影響なのか、サユリはある時塔の影響を受けて意識を失ってしまった。また彼女が意識を失うと同時にユニオンの塔がもたらす能力は一定範囲内でのみ効果に押しとどめられてしまう。これについては、サユリの祖父が開発責任だったのが関係しているのか、塔の力がサユリに流れこむように仕組まれており、書き換えられた場所では彼女の夢を再現するように世界の改変を行っていた。限定的なものであるが、驚異的な能力を封じられる手段としてサユリを保護するために彼女は東京の病院で隔離されていたのです。

それを先に知ったのはタクヤだった。彼は塔についての研究に携わる中で塔の秘密、サユリがどうしていなくなってしまったのかを知る事になった。

開戦間近になって

タクヤがサユリの状況を知る中で、ヒロキは1人虚無感に苛まれながら過ごす。3年という時間の中で彼女がよく弾いていたバイオリンを学び、いつしか彼女がこよなく愛していた曲を奏でられるくらいに上達する。それでももう戻らない時間に哀愁を抱きながら、ある時届いた手紙でサユリの状況を知ります。

自分ではどうにもならない、タクヤに頼るしかないと思って助けを求めますが、タクヤにしてみれば逃げたくせにという気持ちが強かっただろう。容赦なく銃口を向けるタクヤがポツポツと語る中でヒロキに告げられる真実は、とても重いものだった。自分ではどうにもならない、それこそ間もなく戦争が始まるかもしれない状況下においては口出しできるわけなかった。それでもサユリを助けたい、その思いを双方が理解したことで一度捨てた情熱を2人はまた持つようになる。それはユニオンの塔へいくために飛行機を完成させて、サユリを救い出そうと言うものだった。

迷いと苦悩、タクヤとヒロキはそれぞれかつて好きだった女の子を心の中に残ったままだったことが、なお2人の背中を押して眠れる姫君を目覚めさせる騎士として進んでいきます。

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結末について

紆余曲折あって飛行機を飛ばせられたヒロキはサユリを連れて塔を目指します。そんな2人を見送るようにタクヤは彼らを後押しする姿が印象的だ。やがて見えてきた塔に近づいて、彼女の夢のなかでヒロキはサユリと再会します。そこでは3年分の時間を過ごした彼女の思いがつめ込まれていて、それを聞いてヒロキも嬉しそうにしていた。やがて世界を守るために塔を爆発させようとする、その直前にサユリは長きに渡る眠りから目覚めて一件落着となる。

そしてエンディングになるわけですが、ここからが賛否両論となっている。というのも、それ以前の展開から読み解くと、自然とヒロキとサユリ、もしくはタクヤとサユリのどちらかが結ばれるのではと予想が出来るはずだ。けれどサユリはヒロキにずっと淡い恋心を抱いており、2人が両思いだったのでそうなると見て取れた人も多いでしょう。しかしエンディングではヒロキとサユリは一緒に歩いておらず、それぞれがそれぞれ別の道を歩いていたのです。

どうしてかという理由については、サユリは塔の力で眠りについて3年分の夢を見ていましたが、目覚めてからその全てが失われてしまった。つまり、彼女の時間の中では中学3年生の頃までしかなく、目覚めれば既に数年の時間が経過していたというタイムスリップをしたような思いに苛まれる。また夢のなかでヒロキと再会したことも全て忘却の彼方へ置き忘れてしまい、何があったのかも覚えていなかった。

その結果、このままでは自分はヒロキにずっと依存し続けてしまうとして、サユリは頼らない生き方を選ぶ。彼女の意思を尊重するようにヒロキもまた自分の道を歩いて行くと決めた。モノローグで勝たれた、

誰もいない世界で、ただひたすらお互いだけを求め合っていた。あの二人の関係がどれほど特別なものだったか。どうかカミサマ一瞬だけでもいいからこの気持ちを消さないでください

この台詞が物語るように、あの時間を忘れてもそれら本物だったことだけは事実だから消さないでくれと嘆願するのは、ヒロキとサユリの2人が思ったことだったのではないかと考えられている。悲恋という終わり方ではなく、自立という選択肢を尊重しての別れを決断したことになる。

そんな終わり方なので、人によっては意見や考察で大分内容が分かれてきます。